アニメ「氷菓」の19話「心当たりのある者は」がすごい。

次に2012年アニメの振り返り。年末に飲みながら話していたベスト3は以下のとおりです。


1.氷菓
2.坂道のアポロン
3.あの夏で待ってる


なんか全部学園ものなんですがw そのほか、モーレツ宇宙海賊謎の彼女Xとなりの怪物くんなどもよかったですねぇ。そんななか、2012年で「この一話がすごい!」と感動した「氷菓」の19話「心当たりのある者は」についてざっくり感想を。


「十月三十一日、駅前の功文堂で買い物をした心当たりのある者は、 至急、職員室柴崎のところまで来なさい」


偶然流れた上記の校内放送がどんな意味を持つかについて、奉太郎とえるが推論していくという、ただそれだけのお話。登場するのは奉太郎とえるの二人だけで、場面も30分間ずっと古典部の部室。事件も起こらなければ証拠集めもしないため、内容としても映像としても地味になりそうなものです。が、これが抜群に面白かった!あまりに面白いので、私はこの1話だけを20回くらいは繰り返し見ていますw


まずミステリとして。校内放送を単語単位にまでばらし、それぞれを分析して意味を考えていくことで、一見なんの変哲もない文章から不自然な点が浮き上がってくる。この感覚がたまらなく気持ちよく、ワクワクしました。分析と推論の立て方が丹念に説明されているため、ミステリ作家の思考プロセスを追体験できる喜びもありました。米澤さんはこうやって状況を整理して、そのうえでトリックを考え出しているのだなぁと。まさに、マジックの仕掛けのネタばらしをしてもらったときのような興奮を覚えました。


また演出面では、状況を整理するときのピクトグラムを使った映像がスマートでした。理屈っぽい説明の場合、活字だと読者は自分のペースで読めるため理解しやすいですが、アニメだと視聴者が理解しないままに説明が流れてしまう・・・ということがあります(劇場版パトレイバー2で淡々と続く会話を聞かされて、あんなの一回みただけじゃ理解できねぇよ!と憤った記憶がw)。しかしこのお話では、奉太郎とえるの会話にピクトグラムを使ったシンプルで動きのある説明映像を重ねることで、ややこしい推論の課程をわかりやすく説明しています。私は理解が遅く、本を読むスピードもひどくゆっくりなのですが、そんな私でも一回目の視聴ですんなりと推論の課程を把握できてしまいました。地味なことかもしれませんが、理屈をスムーズに説明できる演出力に私は脱帽しました。もちろん、わかりやすいだけでなくて楽しい映像に仕上がっており、見ていて楽しいものになっています。


以上のように、見せ方も含めてミステリとして抜群に面白く、演出面でもキレキレなこのお話。が、何よりも素晴らしいのは、これだけのことをやっておきながら、結局のところ奉太郎とえるがただいちゃついているだけじゃねぇか!ということなのですw や、もうね、ちょっとしたところで二人が近づきすぎて照れちゃったり、奉太郎がえるをからかってみたりと、結局推理ゲームを肴にいちゃいちゃしてやがるわけですよ!お前ら早く付き合っちゃえよ!・・・と、思わず取り乱してしまうくらい、なんというか、二人が妙に可愛いのですw 推論をすることで何かの問題が解決するという類のお話でなく、あくまで推理ゲームであるだけに、結果としてただ二人が仲良くしている感が凄いのですよね。また、たったそれだけのために一話が使われている贅沢感! 私、こういうお話大好きですw


なお、原作とを読むといちゃいちゃ感はほとんどなく、このあたりは「氷菓」に対する京都アニメーション側の味付けの方向性が出ているところでしょう。原作ファンにとっては受け入れにくい面もありそうです。・・・が、私はこの味付けを全面的に受け入れます!だって可愛いものw そんなわけで、最終的には自分の趣味趣向が全面に出たレビューになってしまいましたが、自分にとって「心当たりのある者は」は2012年で一番大好きな一話となりました。