「鉄(くろがね)コミュニケイション」

「記憶喪失で推定年齢13歳で、人類最後の生き残りかも知れないわたし―でも平気。わたしには、みんながいるから。スパイク君やアンジェラさんやクレリックさんやリーブスさんやトリガー君がいるから。だから平気―」廃墟に家族同然のロボットたちと住む少女ハルカはある日、自分そっくりの女の子を見かける。 ―もしかして自分以外の人間が生きてたの?大捜索の末、ようやく出会ったその女の子はイーヴァと名乗り、そしてその正体は…。


むぅ、電車で本読んでて泣きそうになったのは初めてでした。。。風邪引いて体弱ってるのもあるんだろうけども、やられましたわ。間違いなく傑作。漫画原作のノベライズということで手を出していませんでしたが、もっと早く手を出しておくべきでした。原作とはキャラと世界観のみ共通という感じらしくて、読めば納得の完全秋山作品です。


この作品の世界観は「崩壊後の世界」。30年前の戦争で世界は廃墟と化していて、そこに唯一の人間の生き残りかもしれないハルカと、5体のロボットたちが「かぞく」として暮らしているという設定です。
著者の作品「猫の地球儀」はもっと複雑で独特な世界観で、SFとしてはあちらのほうがすごいんだろうけれど、理解しながら読むのが結構大変という部分がありました。それに比べたら「鉄コミ」はわかりやすい適度なSFで、私としては読みやすく、1巻目からぐいぐいと引き込まれました。


さて、物語の構成はハルカの過去、ハルカになぜか「びっくりそっくり」な人間型ロボットであるイーヴァの過去、そしてイーヴァの相棒であるルークの過去という「謎」があり、それが鍵となって物語が展開する形式です。まぁ、驚くような真相が隠されているわけでもないですし、多少漫画っぽいお話でもあります。しかし、この物語の魅力はそこではなく、人間とロボットとのふれあいであり、カッチョいいバトルであり、そして数々の名場面だろうと思います。


「人間とロボットとのふれあい」については、ハルカと住むロボットたちのキャラクターが素晴らしいですし、保護者っぷりもいいです。ああ、漏れも30年間コールドスリープされていればあんなに素敵な家族に恵まれたのかなぁw それは冗談として、特に「いい男」のトリガー君、先生のクレリックさん、そして男前(女性型のロボですがw)アンジェラさんのキャラクターがいいですねぇ。そして、彼らロボットたちのハルカへの愛情がよぉ〜く伝わってきて、もうそれだけで幸せな気分になりました。
また、人間関係につきものの「友情、嫉妬、憧れ」が、人間とロボットの間、ロボットとロボットの間という形で表現されています。その中でも印象に残ったのが、アンジェラさんがヘッドセットを掛けさせたときに、ハルカが号泣するシーン。もう、なんであんなにいいシーン書けるかなぁw


…と、ここまで書いてきたけれど、なんかまともな感想書けないや。あとは思ったことの箇条書きだ。


・バトルシーンは「猫の地球儀」の「スパイラルダイブ」よりもかなりイメージしやすかったです。メカ同士の戦闘、燃えます。ただ、チェスがわかっていればもう少し楽しめるのかも。


・話の前半部分では「秋山節」は控えめかなと思ったのですが、全然そんなことありませんでしたw 後半になって展開がハードになってきてからは、もう筆がノッてるなぁという感じ。あと、ロボット同士の会話に音声ではないデータのやり取りが使用されるのも、なかなかいい味出してました。


・秋山作品にはやはり「アホの子」が出てくるのですねw この作品ではハルカ、「猫の地球儀」では楽(ネコですが…)、DRAGON BUSTERでは月華…。しかし、楽もハルカも幼いから許せるんですが、月華はあの歳でアレなのは許せない…w まぁ、動物だと思うことにしてからは大丈夫になってきましたがw


・「社会主義カレー」とか「じんみんかいぎー!」とか、ハルカのセンスはいったい何なんでしょうか?w もしかしたら両親の影響なのかも…w


あと、印象に残ったシーン。というか、名シーン作るのうまいわこの人。


・「アイザック・アシモフは糞して寝ろってわけですよ」
アイザック・アシモフの「ロボット三原則」を引き合いに出して、人とロボットの「かぞく」の関係性をびしっと示したクレリックさんの名言。すばらしい。


・「UNKNOWN-RES(001):」
「あめあめふれふれ」のラストシーン。機械やらメカやらばっかりのSFな世界でそんな理屈抜きのトンデモ話(?)はありなのかよ!と思いながらももう涙腺がw ハルカは頑張ったんだもの。そんなことがあってもいいじゃない。


・「暗い空に閃く隻眼iシールドのレーザー光。水滴ににじむ「九太郎」の文字。」
これはもう、何かよくわからんがツボだったシーン。アンジェラさんが敵に突っ込んでいくバトルシーンで、アンジェラさんのプロテクトギアにハルカが書いた「九太郎」の文字がチラッと見えるっていう、それだけなんですがすごくいい!熱いシーンなのにどことなく馬鹿らしいのと、ハルカはアンジェラさんに愛されてるよなぁってのもあって、なんかジーンときてしまった…。


てなわけで、全然まとまりのない感想でしたw とにかく面白かった!ということで…。