「月の影 影の海(十二国記)」

謎の男、ケイキとともに海に映る月の光をくぐりぬけ、高校生の陽子がたどりついたのは地図にない国―巧国。おだやかな風景とは裏腹に闇から躍り出た異形の獣たちとの苛烈な戦いに突きおとされる。なぜ、孤独な旅を続ける運命となったのか、天の意とは何か。『屍鬼』の著者が綴る愛と冒険のスペクタクル。


少女漫画や女性向けライトノベルがおいてある本屋の一角にはどーしてもいることができない私。別に傍目からみれば、一人男が紛れ込んでいることくらいたいしたことではないんだろうけれど、どうにも申し訳ないような気持ちになってしまう…。そんなわけで、ちょっと気になる作品があっても手が出せないということがあります。しかし、「十二国記」のシリーズなら講談社文庫で出版されているので簡単に手に入る、ということで読んでみました。


うーん、無難に面白かったのですが、とても高い評価を得ている作品であるという前提からすれば、少し期待はずれだったかも。友人、先生、家族などと無難に関係を築きながらもどこか溶け込めなかった高校生の陽子が、十二の国がある異世界に連れて行かれて、そこでの経験を通じて成長していくという設定。見てのとおりありがちな設定で、特に新鮮味はありません。もちろん、しっかり話が作られていているので、それなりに楽しめるんですが、やはりインパクトには欠けるかな。


ある意味で印象に残るのは、異世界につれてこられた陽子がシメられまくるところでしょうかw わけもわからず妖魔と戦わされた挙句に異世界に連れてこられて、そこでは妖魔に襲われたり、人に裏切られたりなどで散々な目に…。さすがに陽子がかわいそうw 陽子の成長には欠かせない試練として描かれているのでしょうが、話の前半は陽子が不条理にひどい目にあうシーンが続くもんで、読み進めるのがちょっと辛かったです。話の前半に、もうちょっと掴みになるようなシーンがあれば、読み進めやすいんでしょうけどねぇ。もちろん、その分成長した陽子の姿は頼もしく見えます。


さて、十二の国があるこの異世界の「世界観」については、この序章ではまだ見えてきません。われわれの住む世界とこの異世界との違いはさまざまに描かれていて興味は引かれますが、まだまだわからないことばかり。どうやらこの「世界観」こそが十二国記シリーズ最大の魅力であり「謎」でもあるそうです。そう言われればまだ続きも読みたくなりますねぇ。もうちょっと継続して読んでみる予定。