「とらドラスピンオフ!」

とらドラ・スピンオフ2! 虎、肥ゆる秋 (電撃文庫)
とらドラ・スピンオフ!―幸福の桜色トルネード (電撃文庫)

高校一年、生徒会庶務にして不幸体質の富家幸太は、ある日みんなの兄貴な生徒会長すみれの妹、さくらと出会う。明るくてかわいい彼女に幸太は惹かれるが、さくらは自分の色香に無自覚で無防備な天然扇情娘だった!彼女の追試の勉強を手伝うことになった幸太は、いけない妄想と煩悩との戦いを強いられることになるが―。幸せに不慣れな幸太と天真爛漫なさくらの恋の行方ははたして!?「電撃hp」に連載された三編に大河と竜児が登場する書き下ろしを収録。超弩級ブコメ番外編、待望の文庫化。

食欲の秋。秋刀魚、栗、きのこ…おいしいもの、たくさん…かくして虎は、太った。実乃梨考案の不思議ダイエット法を早々に断念した大河は、不倶戴天の敵、亜美とジムに行くことにするが、そこで彼らを待っていたものとは!?春田浩次、十七歳。女子との理想の出会いは、川で溺れているところを助けて人工呼吸、そのまま彼女の部屋へ、その後は…フヒヒ!そんな妄想がなんと現実のものに。はたしてその顛末は?などなど「電撃文庫MAGAZINE」に掲載された短編を詰め合わせました。注目の書きおろしは独身話です!超弩級ブコメ、待望の番外編。


まずは「スピンオフ1」について。「わたしたちの田村くん」の感想で「今年で27の男が読むには少しむず痒い」などと書きました。それでも、「田村くん」は2巻が二股で泥沼〜だったこともあり、作品全体として「純粋なラブコメ」とはいえないかもしれません。それに対して「スピンオフ1」は男女が好き合うというだけの完全なラブコメなので、「田村くん」に増してむず痒さ倍増!しかし、全身をかきむしりながらも、楽しく読ませていただきましたw


話としては、何をしても不幸が訪れてしまう「不幸体質」の富家幸太と、明るく可愛く、そして何をやっても天然でエロいというさくらが、お互い好きあうまでを描いたラブコメ。不幸体質と天然エロ、という設定が主にコメディー部分で活かされていて、幸太がさくらに勉強を教えるシーンは爆笑ものw このシーンのためにさくらの設定を考えたんではないかと思えるくらいでしたよ。また、幸太が「自分が幸せになると周りが不幸になる」と考えてさくらとのデートをあきらめようと考えたときに、デートのときまでは幸太が不幸になるよう二人で努力する、といった無茶苦茶なシーンがあるんですが、その状況でとある人物に幸太が襲われたときにさくらが放った言葉がスゴイw


「2ミリ!3ミリ!離せ、私は3ミリにのされた富家幸太が見たいんだよぉ!」


もうね、腹抱えて笑いましたよw


もちろん、この設定を活かしているのはコメディー部分だけではありません。2話目の「幸福のトルネード 接近警報発令」のラストシーンは、富家の呼び寄せた不幸でも二人でいれば楽しくなってしまう、というもので、とても幸福なシーンでした。まぁ、ある種ドタバタラブコメのテンプレといえばそうなんですけれど、最初の設定をドラマでもコメディーでもしっかりと活かしている(そしてきちんと面白くなっている)ところに好感を持ちました。
しかし、実質ラストにあたる3話目の「幸福のトルネード F12」は、設定的な面白さではなく、ド直球のラブコメのみで攻めてきます。そして、2話まですっかり楽しんでしまっている私とすれば、もうド直球でもきちんと楽しめてしまうのですよ。いきなり3話目みたいなストレートな話だと拒否反応を起こしそうだけれども、1,2話でキャラクターへの思い入れやらもできてますんでねぇ。まぁ、どこかで冷静な自分が「はいはいよかったですね」などと突っ込みを入れていたりもするのですけどねw 


さて、この「スピンオフ1」は「とらドラ!」のシリーズではありますが、本編を読んでいなくても一つの作品として十分に楽しめる作品です。なので、竹宮ゆゆこ氏の作品を初めて読むという方にお薦めしたいですね。


その一方で「スピンオフ2」です。これはもう、本編読んでいる人が楽しむだけのものといっていいでしょう。具体的に言えば、竜児と大河の二人が日常をだらだらと過ごすのを見て、ニヤニヤできる人が読めばよいのかなと。そして私は、そういうことができる人だなとw まぁ、どうしてもシリーズを読んでいることが前提になるので、単品で楽しむものではないと思います(ただ、春田の話を読んで、短編のラブコメでも「田村くん」のときよりうまくなっているなぁ、という印象を持ちましたが)。
…ちなみに、表紙を含めて大河が何か食べているシーンの挿絵が多く、それがとても可愛いかったです。はい。


と、そんな感じで楽しめた「スピンオフ」2作でした。本編は終了しましたが、あと1作くらいスピンオフ出したりするのかしら?