私の本の好みを紹介する意味で,2006年上半期に読んだ中から
ベスト5を挙げてみます。
この時期に出版されたもの,ということではなく,
私がたまたまこの時期に読んだものの中でのランキングです。
もっとも,挙げてみると作品にあまり統一感がないのですが。。。


GOTH―リストカット事件
5位 GOTH 乙一

猟奇殺人を描いた黒乙一の代表作。
ミステリですが,「僕」と夜のキャラクターもよかったです。
乙一はあまりキャラクター小説書くタイプではないと思うのですが,
この作品はかなりキャラクター小説寄りでしょうね。
短編の中で,面白かったのはやはり「声」。
猟奇殺人,ミステリ要素,白乙一節と,乙一のさまざまな要素が
入り混じったこの短編が,飛びぬけて面白かったです。
設定は暗い感じですが,「白乙一」ファンの私でも楽しめる内容で,
乙一の代表作の一つというのも納得の一冊でした。
そのほか,2006上半期に読んだ乙一作品は
「夏と花火と私の死体」,「ZOO」の2冊。


重力ピエロ
4位 重力ピエロ 伊坂幸太郎

「透明ポーラベア」を読んだのが今年だったら,
間違いなくそちらを上に持っていくのですが…。
7月に文庫化された,伊坂の代表作の一つ。
伊坂作品は,読んでいるときは面白いけれども
読後はそれほど余韻が残るものではないので,
この作品を5位以内に入れるかどうかはちょっと悩むところでしたが,
まあ,単純に読んでいるときは面白かったので。
ストーリーがものすごい面白い,という作品ではないと思いますが,
延々と続く伊坂節の会話を読んでいて,
やっぱり伊坂はいいなぁ,と思ってしまいました。
この作品が面白いと思うか否かが,伊坂作品が合うかどうかの
試金石になるような気がします。
そのほか,2006上半期に読んだ伊坂作品は,
「オーデュボンの祈り」,「陽気なギャングの日常と襲撃」,「チルドレン」。


少女七竈と七人の可愛そうな大人
3位 少女七竃と七人の可愛そうな大人 桜庭一樹

衝撃度でいえば,「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」のほうが強いでしょう。
しかし,この作品は今後の桜庭氏の一般小説路線に大きく期待を
抱かせる内容だったので,こちらを3位に持ってきました。
桜庭小説は,「推定少女」にしろ「ブルースカイ」にしろ,
途中までは面白いのに,ラストで「それで終わり?」ということが
多かったので,一般小説として書くこの作品がどうなるのか,
ちょっと心配していました。
しかし,この作品を読んだ今では,まったくの杞憂だったなあと思っています。
ラノベ作家ならではのキャラクター描写,
桜庭氏ならではの独特な語り口調,そしてじんわりと来るラストシーンと,
どれをとっても文句なしです。
桜庭氏の少女物のテーマがうまく一般小説化されて,
さらに洗練されたという印象を持ちました。
…この上半期,桜庭氏の作品に出会えたのは幸運だったと思います。
そのほか,2006上半期に読んだ桜庭作品は,
砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」,「ブルースカイ」
推定少女」,「少女には向かない職業」。


リレキショ (河出文庫)
2位 リレキショ 中村航

間違いなく,現時点での中村航の代表作でしょう。
半沢良の素性,山崎さんの涙の理由,そしてその後の
半沢良の未来など,あらゆることをほとんどぼかしたままで
終わってしまいましたが,それもまたこの作品の魅力だと思います。
いや,終わり方はやっぱり少し物足りなかったかなぁとも思いますが,
それでもやはり,この作品は面白かった。
日常を独特の切り口で面白おかしく描く中村氏の感性が,
何よりこの作品を面白くしているといえるでしょう。
読み終えた後に,少しだけ幸せになれるような作品になっていると思います。
…ウルシバラの電波な手紙,楽しくて結構何度も読み返してしまったなぁ。
そのほか,2006上半期に読んだ中村氏の作品は
「夏休み」,「くるくる回るすべり台」。


よつばと! (1) (電撃コミックス)
1位 よつばと!(1〜5巻)あずまきよひこ

おそらくこのまま,2006年度のトップだろうなぁ。
個人的な2006年度のトップは,あずまきよひこ氏の「よつばと!」。
私は,椎名誠氏の「銀座のカラス」や中村航氏の「リレキショ」など,
特に大きなイベントの発生しない,ただの日常を描いた小説が好きなのですが,
この漫画は,それらと並ぶ素晴らしい作品だと思います。

たいしたイベントは発生しない,時間はほとんど経過しない,
ブラックユーモアは使わない,さらにはあずま氏が(おそらく)得意とする
シュールな笑いも使わないという,かなり制約された条件で
書かれている作品だと思います。
にもかかわらず,これだけ笑えて心が温まる作品に仕上がっているというのは,
ただただ感心するばかりです。
あずまんが大王」も確かに面白かったですが,
やはり「よつばと!」のクオリティーにはかなわないでしょう。
(いやでも,大阪さんというキャラクターを作った点で,
 「あずまんが大王」はネ申ではあるのですが。。。)
作中ではついに夏休みが終わってしまいましたが,
これからもよつばの日常を書き続けてほしいと思います。

そのほか,2006上半期に読んだあずま氏の作品は「あずまんが大王」。


…こんな感じです。