猫の地球儀〈その2〉幽の章 (電撃文庫)

スカイウォーカーであると言うだけで宣教部隊に殺される時代。三十六番目のスカイウォーカー朧が残したロボットと彼の人生のすべてが詰まったビンを拾ったのは、朧の予言通り、三十七番目のスカイウォーカー幽でその幽は一匹のちっぽけな黒猫だった―。史上最強の斑は過去四年に渡りスパイラルダイバーの頂点に君臨し続け、斑に挑戦することはすなわち、死であると言われたその斑に勝利したのは二千五百三十三番のスパイラルダイバー焔でその焔は一匹の痩せた白猫だった―。そんな幽と焔が出会ったとき、物語は始まる…。SFファンタジー


ラノベ作家として高い評価を得ている秋山氏の作品です。
以前に「イリヤの空,UFOの夏」を読んだのですが,
漫画っぽい設定がちょっと苦手かな,と思いました。
それでも,巧みな風景描写,物悲しいラストなどは印象に残っていたので,
今回「猫の地球儀」を読んでみました。


この作品は思いっきりSFで,やはり設定は漫画っぽいですが,
今回はそれほど気になりませんでした。
イリヤ…」は舞台が中学校で,現実と接点があるために
リアリティのあるなしを意識してしまったのですが,
この話の舞台はスペースコロニーだし,時代も全然現在じゃないし,ということで,
荒唐無稽な設定でもすんなり入ることができたのかも知れません。


テーマは「夢」で,中高生を対象にしたライトノベルにしては
かなり「夢」を身も蓋もない形で描いていると思います。
特に,幽(かすか)の夢によって生じた犠牲があまりにも大きくて,
読んでいてかなりショックを受けると思います。
しかし,筆者の語る「夢」を表現するためには,とても効果的だとは思います。
ただ,クソ坊主こと霞(かすみ)がテーマを語りすぎるのは,ちょっといただけなかったかな。
ストーリーの中でテーマがうまく表現されているだけに,
そこまで親切に語らなくても,という気がしてしまいました。


ここからは少しネタバレです。
私が一番印象に残ったシーンは,楽(かぐら)がシャボン玉で遊ぶシーン。
「魔法の粉」の本当の使い方を,洗剤ではなくシャボン玉としたところに,
幽(かすか)と楽(かぐら)の関係が「友達」になったことを強く感じました。
そして,無邪気に遊ぶ楽がほほえましさが,その後の展開をいっそう辛いものに…。
このシーンがとにかく素晴らしかったので,読んでよかったと思ってしまいました。
また機会があれば,秋山氏の作品を読んでみようかな…。