ナイチンゲールの沈黙

ナイチンゲールの沈黙

東城大学医学部付属病院、小児科病棟に勤務する浜田小夜。担当は、眼球に発生する癌網膜芽腫(レティノブラストーマ)の子供たち。眼球を摘出されてしまう彼らの運命に心を痛めた小夜は、子供たちのメンタルサポートを不定愁訴外来・田口公平に依頼する。
その渦中に、患児の父親が殺され、警察庁から派遣された加納警視正は院内捜査を開始する。小児科病棟や救急センターのスタッフ、大量吐血で緊急入院した伝説の歌姫、そこに厚生労働省の変人・白鳥圭輔も加わり、事件は思いもかけない展開を見せていく…。

正直,MYSCONの件がなかったらこの作品は読んでいなかったかもしれません。書評サイトなどを見ても,一作目の「チーム・バチスタの栄光」に比べて評価が低いし,その一作目に対する自分の評価も「まあまあ面白い」だし。でもまあ,せっかくトークショーに行くんだからと読んでみたのが正解だった。これ,普通に面白です。


辛口評価の理由もわからなくはないです。冴子や小夜の「歌」による現象がどうにもリアリティにかけるという部分はあります。展開が強引過ぎるところもあります。また,いろんな話が出てくるせいで,話の中心がぼやけてしまっているのも,欠点の一つではあるでしょう。


これだけいろいろあっても,私が「チーム・バチスタ…」より楽しかったと言う理由は,なんと言ってもキャラクターでしょう。確かに前作もキャラクターが立っていて,それが評価されていました。確かに,私も魅力的だとは思いました。でも,どうも彼らのジメッとした感じというか,イヤミくささというか,なんとなく陰性なイメージが苦手なところもありました。でも今回は,そのイヤミくささがいい感じに抜けていて,とても魅力的になったと私は思います。「廊下トンビ」の兵藤先生なんか,カラッとした,いい感じのお間抜けキャラになっているしw また,新キャラの「デジタル・ハウンドドック」加納,その部下である玉川もなかなかいい感じ。またうるさい奴が出てきたぞ,てな感じで。まあ,白鳥よりは良識的だとは思いますがねw


これだけいろんなキャラクターが周囲にいる中で,メインの話になっている冴子や小夜といった歌姫,そして小児科の子供たちがいる。普通,ここまでやったら,誰が誰だかわからなくなったりしそうですが,私はそれが全然なかったです。どのキャラクターもしっかり印象に残っています。そして早くも前半から「海堂キャラクター・オールスター」をやっておいて,中盤になってついに真打登場!という感じで白鳥が出てきたときには,思わず頬が緩んでしまいました。話の中盤辺りでのワクワク感はすごいありましたねぇ。


残念なのは終盤,どうにも「ミステリ」な感じで決着をつけてしまったところ。いや,ミステリ作品だから当たり前なんだけれどw ただ,伊坂みたいにミステリ部分を自然に見せる技術があれば,物語終盤の「ミステリ臭さ」はなくなるんだろうと思いました。キャラクター・オールスターが,急に「火曜サスペンス」になってしまった感じという感じですかねぇ。。。終盤の展開はちょっとがっかりでした。


あと,前作の感想でも書きましたが,話の流れにはほとんど関係ないところでの小細工がやっぱりうまい。メインの話に絡んでくる伏線とかよりも,どうでもいいところでのネタのほうが面白いくらいです。次回作は「メディカル・エンターテイメント」じゃなくて,「ハイパーマンバッカス」で行くべきだと思います。絶対ないとは思いますがw


と,全然話の本筋に触れないままで感想は終了です。。。