「クレイジーフラミンゴの秋」

菅野晴は中学一年生の女の子。クラスではなぜか学級委員を務めているが、そんな大役は自分に馴染まないと思っている。好きなのは、ロボットアニメの話や洋楽を聞くこと、そして、こっそり歌うこと。だから同級生の女の子たちの話題に今ひとつノりきれず、かといって男の子達の輪にも入れず、微妙にクラスに溶け込めないままに過ごしていた。
そんな晴だが、文化祭でのクラスの合唱リーダーというありがたくもない役回りを、同じく学級委員の須田冽史から突然に任される。合唱に非協力的な一部のクラスメイトたちとの衝突、友達とのすれ違い。そうした出来事を通じて晴は、少しだけ大人になる。思春期の女の子の成長を鮮やかに描ききった、ノスタルジックストーリー。


なんといいますか,有川浩の描く「かっこいいお兄さん」(夏木とか堂上とか)に萌える婦女子であれば,かなり楽しめるのではないでしょうかw この小説に登場する「イカサマ」こと原田先生が,なんとも有川浩的なお兄さん像なんですよねぇ。男の私が見ると,どうにもむず痒いw それでもまぁ,この作品はイカサマのキャラクターでしょうな。


デビュー作である「クレイジーカンガルーの夏」と同じ時代,同じ学校が舞台。今作のほうがテーマとしてはラノベっぽいかもしれませんが,やっぱりちょっと違うかな。ちょいとひねくれた少女である晴(はる)が,学級委員として過ごした中一の2学期を描いた作品です。


クラスメイトの葉子と仲良くなっていく部分なんかがちょっと好きかも。喧嘩して仲直りするときの会話は,何の答えも出ていないしお互いの立場は何も変わっていない気がするのですが,それくらいのほうが中学生らしいし,現実に仲直りするときってこんな感じだよなぁ,と思いました。前作でも感じましたが,誼氏は子供達の感情をはっきりしたものではなく,曖昧と言うか,ちょっとしたことでくるくると変わっていくもとのして書いているように思います。それが苦手な方は読みにくいかもしれませんが,私は結構好きですね。


ただ,葉子らと仲良くなっていく過程で,芙美子らと疎遠になっていく場面がありますが,理解はできるけれど,ちょっと芙美子は可哀想でした。晴の立場からしたら確かに芙美子とは離れていくでしょうし,私も中学時代,噂好きの女子って大嫌いだったわけですが,それにしてもなぁ…。アイロン掛けてくれたりと,芙美子も晴を想っているところもあっただろうに,ちょっとひどいよなぁ。イエローカードを出さないで,いきなりレッドカードを食らわせるような晴の態度はちょっとずるい。


あとはまぁ,相変わらず1979年の文化ネタをバンバンと入れ込んでいっています。ただ,ガンダムがわからないとわかりにくい前作に比べれば,今作は元ネタわからなくても大丈夫だと思います。私は全然わからなかったけれどもついていけましたし。また,テーマ自体も前作が「血縁」的な古臭い価値観があったのに対して,今回はもっとストレートな青春小説なので,時代を気にせずに読めるのではないかと思います。