「レキオス」

舞台は西暦二〇〇〇年の沖縄。米軍から返還された天久開放地の荒野に巨大な魔法陣が出現する。一〇〇〇年の時を経て甦る伝説の地霊「レキオス」を巡り、米軍、学者、女子高生、ユタたちが入り乱れ、ついにその封印は解かれてしまう―。大いなる魔法が完成するとき、人々はそこに何を見るのか?時空を超えて弾け飛ぶ壮大な物語世界がついに文庫化。巻末には大森望×豊崎由美池上永一とレキオスをめぐる対談を収録。


読み始めて100ページくらいまではグイグイと読み進められました。いやぁ,この文体はハマりますねぇ。基本三人称の文体なのにいきなり一人称的な内面描写になったり,その内面描写の主語がころころと変わって読みづらいんだけれど妙に勢いがあって楽しかったり,という文体は秋山瑞人っぽいです。物語の主題とは全然関係のないギャグをポーンと入れてくる辺りもちょっと似ているかも。また,沖縄の自然の描き方や,様々な人種の人々が行きかう雑然としたコザの街の描き方などは,古川日出男的なマジックリアリズム文体っぽくもあります。イメージとしては,秋山と古川を足して2で割って,それを下品にして悪ふざけを増やした,というような感じでしょうか。って,全然わからないですねw とにかく,かなりクセはあるけれど,ハマる文体だなぁという感じ。


ただ,お話としては魔法やらなんやらがバンバンと出てくる感じのばりばりのファンタジーで,どうしても私の想像力はこの作品についていけませんでした。いや,もうちょっとSFっぽいのかなぁとも思ったのですが,やはりこれはファンタジーだろうなぁ。レキオスの正体にしても,途中までは5次元やら4つの力の統一やら言っているのに,最終的にはそのへんのことどーでも良くなっている気もするしw まぁ,いろんなことを説明せずにぽんぽんと話を進めていくので(この辺も秋山っぽい),私があまり理解できていないだけかもしれませんが,やはり基本はファンタジーでしょうね。


ほかにも,キャラクター描写がかなり漫画的であるなどの要素も含めて,読む人を選ぶ作品だろうなぁは思います。実際私も,楽しめることは楽しめるのですが,この長さ(文庫で600ページくらい)はちょっとしんどい感じでした。ただそうは言っても,池上氏の作品はほかにも読んでみたい!と思わせるには十分な作品ではありました。ばからしくも疾走感のある文体は本当に魅力的ですし,前半で張っておいた伏線をしっかりと回収する手法もなかなかのものですからね。「レキオス」と同じ系統だという「シャングリ・ラ」はとりあえず後回しにしてみて,「バガージマヌパナス」や「風車祭(カジマヤー)」辺りを読んでみるなぁ。