「グラスホッパー」

復讐。功名心。過去の清算。それぞれの思いを抱え、男たちは走る。3人の思いが交錯したとき、運命は大きく動き始める…。クールでファニーな殺し屋たちが奏でる狂想曲。書き下ろし長編。


殺し屋達が対決するお話…とでも言えばよいのでしょうか。伊坂作品の中でも「陽気なギャング…」シリーズと並んでかなり漫画的な世界観を持つ作品で,リアリティとかを求めてしまう方にはちょっと合わない作品かもしれません。でも,個人的には結構楽しめました。


序盤からまぁサクサクと人が殺されていくので,話に全然リアリティが感じられないんですが,これはB級映画みたいなイメージなのかもしれません。この作品みたいに,序盤から「この話にリアリティはないですよー」と宣言してくれると,先の話が読みやすくなっていいですね。おかげで,殺し屋の「鯨」が超能力みたいな力を発揮して人を殺したって,こっちとしては全然違和感もなかったですし。
登場するキャラクター達も,性格はいつもの伊坂キャラという感じではありますが,殺し屋でそれぞれに得意技があると言う,かなり漫画チックな設定になっています。


話の筋は,そんな殺し屋達と,主人公(?)である鈴木がいろいろと交錯したり対決したりと言った感じです。伊坂作品としては,それほどストーリーも深く練られているという印象ではないのですが,軽妙な語り口や,殺す殺さないというやりとりのドキドキ感やらで,結構読ませる作品になっています。なんというか,とにかく伊坂の筆が乗っているという感じですな。「ジャッククリスピンいわく…」とか,こういうノリで書いているときの伊坂は大好きだぁ。
結局,私はこの話を全然深読みできていない感じがするのですがw,とにもかくにも娯楽小説として十分に楽しい作品ですよ,というのが私の感想です。


ちなみに私は,この作品を読んで伊坂作品はすべて読んだことになってしまいました…。今後は新刊を待つしかないんだなぁ,と思うとちょっと辛い気もしますねぇ。。。