「プラネテス(1巻〜4巻)」

時代は2070年代(2075年以降)。人類は宇宙開発を進め、月面でのヘリウム3の採掘など、資源開発が商業規模で行われている。火星には実験居住施設もあり、木星土星への有人探査計画も進んでいる。毎日、地上と宇宙とを結ぶ高々度旅客機は軌道上と宇宙とを往復し、宇宙ステーションや月面には多くの人たちが生活し、様々な仕事をしている。しかし、長い宇宙開発の歴史の影で生まれたスペースデブリ(宇宙空間のゴミ。廃棄された人工衛星や、ロケットの残骸など)は軌道上にあふれ、実際にたびたび旅客機と衝突事故を起こすなど、社会問題となっていた。

また、地上の貧困・紛争問題は未解決のままで、宇宙開発の恩恵は、先進各国の独占状態にある。このため貧困による僻みや思想的な理由付けによるテロの問題も、また未解決である。

主人公のハチマキは宇宙で働くサラリーマン。主な仕事は宇宙のゴミ「デブリ」の回収作業。いつか自分個人の宇宙船を所有することを夢みている。ゴミ拾いは大事な仕事だと自分を納得させつつ、当初の夢と現実の狭間でこのまま現実を受け入れるか、それとも夢を追い求めるか思い悩む。


wikipediaより


この作品に対して私が期待していたのが,どちらかというと1巻の第1話みたいなものだったんだろうなぁ,という思いがあります。…はっきり言ってしまえば,主人公であるハチマキがメインであるパートがどうにも苦手で,それ以外の部分については好きな作品です,というところでしょうか。


まずは好きな部分から。「宇宙」を題材にしながら,当初の話の中心はデブリ(宇宙空間にあるゴミ)回収業という地味なお仕事という設定がいい感じです。広大な宇宙をあえて「背景」にして繰り広げられる,それぞれの人々のお話という雰囲気がよいなぁと思います。そういう観点から,私はデブリ回収業者として働くお母さん,フィー姉さんの話あたりが好きですね。この本を貸してくれた友人とも話していたのですが,4巻で地球から見える流れ星がデブリでしかないことを悟りながらも,流れ星に何かを祈ってしまいそうになるシーンなんかは素晴らしいですね。まさに,一人の人間のドラマが,宇宙と言う贅沢な舞台を背景にして表現されていると思いました。


で,苦手だったのがハチマキのパートです。これはもう個人的な読み方の問題としかいえないんですが,ハチマキのキャラクターがどうにも一貫性がなくってダメだったんですわ。ハチマキってどちらかといえば脱力系のキャラクターで,それが木星行きのパイロットを目指すようになるわけですが,その動機が「自分の宇宙船を持ちたい」ってのがどうにも弱い気がするんですよね。もちろん,木星行きのプロジェクトに使われる宇宙船を実際に見てから変わった,というのはわからないではないのですが,2巻であれだけ木星行きに執着するシーンを見ると,やっぱり動機として弱すぎるよなぁ,と思ってしまいました。また,3巻からの「広い宇宙」という観念に飲み込まれて呆然とするハチマキにしても,「宇宙」という広大すぎるものに対する認識が弱い私としては,なんかよくわからなかった…。あと,無粋を承知で言えば,「テロリストはキスぐらいじゃおとなしくならねぇぜ!」というところでしょうかw


とはいえ,主人公たるハチマキの周囲にいる人々のお話については,やっぱり魅力的だったと思います。ちなみに,この作品は星雲賞(コミック部門)を受賞しているようです。星雲賞受賞作品はいままで何冊か読んできましたが,それぞれなかなか面白いという印象があります(それこそ,今読んでいる銀河英雄伝説とか)。ハードSFはちょっと読めない気もしますが,手を出せそうなものから読んでみたいですね。