「夢見る黄金地球儀」

首都圏の端っこに位置する桜宮市に突如舞い込んだ1億円。その名も「ふるさと創生基金」。だがその金は黄金をはめ込んだ地球儀に姿を変え、今では寂れた水族館にひっそり置かれているだけとなった――はずだった。が、ある日を境にトラブル招聘体質の男・平沼平介の日常を一変させる厄介の種へと変貌する。
8年ぶりに現れた悪友が言い放つ。「久しぶり。ところでお前、1億円欲しくない?」
かくして黄金地球儀奪取作戦が始動する。二転三転四転する計画、知らぬ間に迫りくる危機。平介は相次ぐ難局を乗り越え、黄金を手にすることが出来るのか。『チーム・バチスタの栄光』の俊英が放つ、驚愕のジェットコースター・ノベル!


チープな雰囲気を狙って書いたんだろうけれども,やっぱりどうにもチープだw 「警察倶楽部」(大倉崇弘)を読んだときにも思ったけれど,チープな設定を面白く書くってのは難しいんだろうなぁ。「陽気なギャングが地球を回す」を書いた伊坂幸太郎は,やっぱり天才なんだと思いますw これは「私がこう感じた」のレベルでしかないけれども,同じく無茶な設定をやるんだったら,40キログラムのボールでお手玉するよりも,銀行強盗の最中に演説するほうが笑えるし格好いいじゃないw そういう無茶苦茶をやる際の「センス」の点で,この作品は「陽気な…」に全然勝ててない気がするんですよねぇ。まぁ,傑作たる「陽気な…」と比較するというのも酷な話ではありますが…。


「バチスタ」シリーズのように,シリアスな設定の中でチープなキャラクターを描いていたときはとても魅力的だったのが,チープな設定のこの中ではどうもキャラが立たなかったイメージです。また,肝心の黄金地球儀強奪シーンも盛り上がらないし,どうにも消化不良でした。ガラスのジョーの設定にしても,最初からしっかりと考えられていただろうに,最後の最後になって正体が明らかになるだけで,設定自体はあまり活かされていなかった気もします。


とまぁ,文句ばかり書いてはいますが,個人的に良かった点も。桜宮市の職員などの役人を出してきて,しっかりおちょくっているのは海堂氏らしくてよかったですw 桜宮市が「黄金地球儀」を作ることになった背景などもバカバカしくも丁寧に書かれているところなどは,個人的には好きかも。こういう,少し社会派的な部分を出しつつ,そこを誇張しておちょくりながら書いてくれたほうが,私としては面白かったかなぁと思いました。まぁ,完全に個人的な意見ですけれどもw