「読むのが怖い! 帰ってきた書評漫才 激闘編」

書評界の両雄、北上次郎大森望がオススメ本を持ち寄り判定しあう異色の対談ブックレビュー(季刊SIGHT誌連載)が3年ぶりに続刊刊行です!未発表分を大幅加筆し、各年のブック・オブ・ザ・イヤーを含むエンターテインメント小説談義・どっさりずっしり136冊分を完全収録! 冒険小説、ハードボイルド、SF、時代もの、恋愛小説にミステリ、青春、スポーツ、ラノベに果ては少女小説まで、業界最強の指南役がめくるめくエンタメ本の世界を本音でご案内します。
○単行本特別企画
北上次郎大森望に/大森望北上次郎に読ませたい オールタイムベスト3


山本弘「まだ見ぬ冬の悲しみも」の感想を書くつもりだったけれど,書店でこの本を見つけてしまったんで予定を変更。私が初めて買った書評本「読むのが怖い!」の第2弾が発売されているではありませんか!第1弾を買った当時は小説を読み始めたばかりだったこともあり,本当にお世話になった本なので,第2弾の出版はうれしいですねぇ。


昔,友人がこの本について「北上次郎に萌えるための本だよ」といっておりましたが,言いえて妙だと思いますw 大森望氏が薦めるSFとかオタク系のマニアックな小説を読まされては「読めなかった!」とか「どんな話だったか覚えてない!」だとか,その反応がいちいち面白い。大森氏が理詰めで「これこれこういう系譜で,ここがすごいんです!」なんていっても,北上氏は「ふーん。でも,俺には関係ない小説だね」みたいな感じでw この,仲がいいのか悪いのかわからないお二方のやり取りが,まさに「漫才書評」になっていて,書評本だけれどもそれだけじゃない楽しさがあります。もちろん,書評本としても非常に役立っていて,特に私は大森氏の評価する本をいつも参考にさせていただいております。


さて,今回の第2弾,私にとってなにより面白かったのは北上次郎銀河英雄伝説評です。北上氏は「スペースオペラは苦手」ということで今まで銀英伝には手を出していなかったらしいのですが,この対談をきっかけに最近読まれています。私も昨年,銀英伝にはまってばかりなだけに,北上氏がこの作品を絶賛していたのがうれしかったですねぇ(まぁ,なんとなく北上氏が好きそうだなってのはわかるんだけどw)評価の中で「銀英伝から20年が経って,銀英伝のフォロワーとして書かれた小説も読んでいて,それでも面白いからすごい」というようなことを書いていて,なるほどなぁと思いました。銀英伝は20年たっても色あせない傑作,ってことでしょうか。


あと,大森氏が「電車男」を絶賛,それを北上氏に読ませる,ってのも爆笑でしたw 「電車男」は私もネットで一気読みした経験があり,大森氏が言うように傑作だと思います(ちなみに本田透氏の「電波男」も読んでいて大傑作だと思っているので,私の立ち位地はよくわからんのですが)。が,まさかそれを北上氏に読ませるとは思わなかったw 当然,北上氏は「感動しないもん」とかまあ,そんな評価でした。ただ,「まあ本としての面白さはいくつかあるんだよ。電車男の話を聞いてる連中がさ,『総員に告ぐ!これは訓練ではない!』って,もう笑っちゃってさあ(笑)」なんてこともおっしゃっています。あの辺りのギャグって,思いっきり2ちゃんねる文化だと思っていたのもが,北上氏にも通用するというのが意外で笑えましたw


とまぁ,パラパラめくっただけでもこれだけ笑いどころが満載,さらには書評としても参考になるこの一冊。本当にお薦めです。