「げんしけん 1〜9巻」

月刊『アフタヌーン』誌上で人気沸騰中!サークル部屋から広がる楽しい大学生活を等身大で描く、アキバ系青春物語!!


友人の家に遊びに行ったときにまとめて借りた漫画のうちの1つ。というか、無理やり貸し出されたというほうが正しい?こんな本を貸し出すあたり、私をオタク化しようという悪意が感じられますw ちなみに、そのほかに渡されたのが押井守監督の「うる星やつら2 ビューティフルドリーマー」。やっぱり悪意を感じる…w


と、そんな感じで読み始めたこの作品ですが、気がついたら9巻を一気に読了。いや、これは本当に面白いw 大学のオタクサークルを舞台にしたという点で注目されていた本作ですが、それを抜きにしても大学生の青春を描いた作品としてすばらしいと思います。まぁ、オタク文化のことは全然まったく知らないし興味もないという人にとっては、読み進めるのが辛いと感じるかもしれませんが…。
何も起こらない系の青春小説ということで、私の大好きな椎名誠氏の「銀座のカラス」などともちょっと重なるところはありますが(あるよね?w)、こちらは社会人ではなく大学生の青春。何も起こらない系の作品の、なんとなくダラダラとした雰囲気ってなんか好みなんですよね。もちろん、それを面白いと感じさせるためにはディテールやギャグの面白さが大前提になるわけで、「げんしけん」もその辺はしっかりしています。掲載雑誌が月刊ということもあるのでしょうか、丁寧に描かれている印象がありますねぇ。


さて、設定としてなによりも面白いのが、一般人であるにもかかわらずオタクサークルである「げんしけん」(現代視覚文化研究会の略称)にかかわることになってしまった春日部咲の存在でしょう。大学で付き合い始めたイケメンの高坂が重度のオタクで「げんしけん」に入ってしまったため、やめさせようと「げんしけん」に来てはちょっかいを出すのですが、気がついたらこのサークルになじんでしまいます。
この咲と、「げんしけん」の2代目会長の斑目を筆頭とするオタクたちとの交流がなんか面白い。一般人とオタクとの感覚のズレを描いたギャグとしてももちろん面白いんですが、なんとな〜く「げんしけん」の人々とつるんでいるうちに、なんとな〜くサークルに愛着を感じるようになっていく過程がいいんですよ。もちろん、咲がオタクになるようなことはぜっったいにないのですが、理解できないものは理解できないものとして、しっかりと交友関係が自然と成り立っているんですよね。この「なんとな〜く」な感じが自然に描かれているのがよかったと思います。まぁ、現実には咲きちゃんのように懐の広い人はいないだろうけどもねw


そんなゆる〜い雰囲気が好きだった私としては、コミックフェスティバル(作中に登場する同人誌即売会で、まぁコミケのことですわ)に「げんしけん」が売る側として初参加するあたりの話までが一番よかったかなぁ。何も創作してこなかった「げんしけん」が、苦労がありながらも同人誌を作りあげたということが、とても輝いて見えます。地味だしアウトローではありますが、これがしっかりと青春なんですわ。
…あと、私も「げんしけん」のメンバーと同様に物語を「消費する」側にいるだけに、彼らの「創作する」ことへの憧れが少し共有できるですよ。だからこそ、「消費する」側の彼らが「創作する」側に立って同人誌を売ることの興奮がなんか伝わってくるんですよねぇ。まぁ、私の場合、エロ同人にはあまり興味ないんですけどもw


そんな中、やはり評価が分かれそうなのは2年目に入ってきた荻上の存在です。まぁ、一人の女性のドラマとしてしっかりと描かれていますが、荻上の存在は「げんしけん」の中にとって異質に物語的というか、ドラマチックすぎるという感じはあります。もともと「ゆるさ」がいい味を出している作品であるだけに、ちょっと作品の雰囲気が変わってしまったかなぁと。まぁ、ディテールに面白い点は幾つもあって、笹原と荻上が結ばれるときのシーンなんかは爆笑したんですけどもw とはいえ、やはり私にとっては初のコミフェス参加くらいまでの雰囲気がすきだなぁ。


というわけで、とても楽しかったこの作品。アニメ版もなかなかすごいということなんで、いつか見てみたいところですな。そして、斑目さん、なんというか、本当にお疲れ様でした。。。