「テンペスト」

テンペスト 下 花風の巻テンペスト 上 若夏の巻

美と教養と見栄と意地が溢れる珊瑚礁の五百年王国は悩んでいた。少女まづるは憧れの王府を救おうと宦官と偽り行政官になって大活躍。しかし待ち受けていたのは島流しの刑だった――。見せ場満載、桁外れの面白さ!


黄昏の美しい王国にペリー来航。近代化の波に立ち向かう宦官兼側室の真鶴。しかし破天荒な一人二役劇は突然幕を閉じる―。時代の変わり目を嵐(テンペスト)となって生き抜いた王宮人の苛烈な愛と涙の物語。


2段組で合計850ページにもなる大作。なんといいますか、こういう作品は感想が書きにくいですなぁ。一言で言ってしまえば、とにかく面白いw 細かい構成であるとか、伏線がどうであるとか、そんな面倒なことはどうでもよいのです。ただただ先が気になってページを繰っていく喜び、それが感じられる見事なエンターテイメント作品でした。
琉球王国に生まれた少女・真鶴が、宦官と偽って科試(琉球版の科挙)に主席合格し、王宮に上がって活躍する、というお話。琉球王国では女性が政治に参加することは認められていなかったのですが、真鶴はあまりにも頭が良く、また家庭の事情などもあったことから、性を偽り宦官の寧温(ねいおん)として官僚になる道を選びます。


見所はいくらでもあります。王宮での寧温の大活躍に拍手し、性を偽ることによって生じる様ざまな問題にハラハラし、王宮内での下らぬ政治闘争に激怒し、後宮(御内原)での女の闘争に呆れ、聞得王君の暴走(笑)に圧倒され…。なんというか、見事に著者の術中にはまっている感じで楽しめますw そして物語がテンポ良く展開されるため、読んでいて飽きることがありませし、大長編であるにもかかわらず長さを感じることはありませんでした。帯にある「ジェットコースター王宮絵巻」というのは、このテンポの良さを上手く表現した良いキャッチコピーだと思います。


また、主人公の寧温が官僚であり、その活躍を描いていることもあって、当時の琉球王朝の独特の政治手法(清国と薩摩とのバランスをとりながら自主独立を保つ)について書かれていたり、また後半になるとアメリカから来た黒船のペリー提督とのやりとりが書かれるなど、一見して小難しく見える題材を扱っています。が、それを難しく見せないところに著者の技量を感じました。私はこの時代の日本について(もちろん琉球についても)全然理解がないのですが、それでも何の苦労もなく読み進められました。


そして、読後には日本とは異なる文化を持つ沖縄、というものに嫌でも興味が出てきます。私自身、一度も沖縄にはいったことがないのですが、何かの機会に一度くらいは行って、この作品の舞台となっている場所を見てみたいなと思いました。…最近流行の、聖地巡礼というやつですなw


…とまぁ、とりあえず感想を書いては見ましたが、やっぱりあんまり意味ないわなw 面倒なことは考えず、とにかく読んで楽しむ、というのが一番だと思います。