「キノの旅12」

キノの旅〈12〉the Beautiful World (電撃文庫)

1年ぶりのシリーズ最新刊。年に一度の刊行というペースはとてもよいなぁ。「キノの旅」は一話が独立した短編になっていて、全体を通しての大きなストーリーがあるわけでもないので、続きが気になるタイプの作品ではありません。それでも、なんとなくたまに読みたいかなぁと思うこともあって、年1冊だとペース的にちょうど良い感じがします。まぁ、あくまで個人的な感覚ですけどw


以前の感想でも書いているとおり、このシリーズに期待するのはとにかくアイデアとオチ。今回は11巻に比べるともう少し、という感じでしょうか。好みだったのは短い作品ですが「幸せの中で」と「徳を積む国」。この2つは国の設定が突拍子もなくてよかったです。願わくばこのネタでもう少し長い作品を作ってほしかったかな。もっと短いのでは「悪魔が来た国」なんかも、最初のイラストと話のギャップがあってよかったです。


余談。手塚治虫の「ブラックジャック」をちょこっと読んだとき、次のコマを見たら話が5年後くらいに飛んでいるということがありました(どんな話だったかは失念…)。それを読んだときに、一話で完結している話で、それぞれの話が時系列で進んでいない作品では、シリーズものという制約があっても時間をかなり自由に動かせるんだなぁと感心した覚えがあります。で、「キノの旅」もまったく同じ条件にある作品(シリーズもの、一話完結、時系列無視)であるため、「ブラックジャック」のように時系列をぶっ飛ばすという手法をちょくちょく使っています。今回は「正義の国」がそうですが、印象に残っているのは9巻の「自然保護の国」。師匠が数十年(?)前に旅で訪れた場所をキノが訪れるという方法で、その間に国がどのように変貌したかを見せていました。このように、「ブラックジャック型」の作品では、時間も含めてかなり自由な構成がとれるという利点があるように思います。そこを活かしてどのように話を作るのか、そんなところにも注目していきたいと思います。次巻はまた来年でしょうかね。