「ジャージの二人」

ジャージの二人 (集英社文庫)

芥川賞作家のアンチ・スロー小説。
失業中で小説家志望の息子。妻はよその男と恋愛中。三度目の結婚生活も危うそうな、写真家の父親。そんな二人が軽井沢の山荘で過ごす、とりとめのない夏の終わりの思い…。

これもまた感想書けない作品だなぁ。あらすじにあるとおり、ちょっとわけありの親子が山荘で数日間を怠惰に過ごすという、本当にそれだけの作品。ストーリーが凝っているとかそういう類の作品ではなく、人の心の動きや山荘生活について、ディテールだけにこだわって描いているといった印象。そのため、「僕」が一人称文で感じていることに対して、「なんとなく分かる」という点が誰しもあるんじゃないかと思います。ちょっとした「あるある系」という感じでしょうか?


話の軸になっているのは、山荘生活の中でふとしたときに見える、浮気している妻に対する「僕」の想いなのでしょう。でも、印象的なのは山荘生活での父と息子の妙な雰囲気で、どことなく惚けた文章が実に不思議な雰囲気をかもし出しています。「僕」と妻との夫婦仲もどこかねじくれていて、そのことをなんとなく父に悟られないようにしている感じが妙にリアルw 積極的に隠すとかではないにしろ、上手くいっていないことをなんとなく気づかれたくないという感じがね。


というわけで、不思議な雰囲気の作品でした。この作品、もし400ページくらい続くようだと飽きてくると思うのですが、200ページくらいと短いのはちょうどよいですね。機会があれば、もう少し長嶋氏の作品を読みたいと思います。