「イノセント・ゲリラの祝祭」

イノセント・ゲリラの祝祭

厚労省役人でロジカル・モンスターの白鳥に、医療事故調査委員会への出席を依頼された田口。さまざまな思惑が飛び交う会議で、田口は、グズグズの医療行政の現実を知ることに…。メディカル・エンターテインメント第4弾。 


バチスタシリーズとしては、傑作「ジェネラル・ルージュの凱旋」以来の作品。そしてその前作と同様、今回も会議室小説。というか、今回はさらに会議室小説でした。しかし、面白さでは完全に前作のほうが上だった。やっぱり、前作は会議室小説の頂点だったんだよね。ほとんど議論だけの小説であれだけ面白かったってのは、ある意味奇跡的だったのではないでしょうか。


今作では日本の医療制度についてかなり突っ込んだ議論がなされるのですが、議論が抽象的に成らざるを得ないという点、また結論が出ないで(おそらく)次回に続くような終わらせ方になってしまった点で、前作のような爽快感がなかった。議論がどこに向かっているのかもよくわからなくなるし。


あと、ここまでストレートに著者の意見を押しとおされるとどうしても鼻につく。自分の問題意識を踏まえつつ、それを強烈なキャラクター性、エンタメ性で押し通してこその海堂作品なわけですよ。それがこの作品では主張をストレートに表現しすぎていて、正直読むのが疲れた。自分の意見だけで物語を作るのが許されるのは、私の中では山本弘だけなのですw


どうでもいいですが、続々と文庫化される海堂作品のすべてが分冊されているのはどういうことだw 螺鈿迷宮も文庫化されたのに、上下巻ではあまり文庫化のメリットがない…。いつものバチスタシリーズよりも短い今作、もし分冊して文庫化したらある意味神ですなw