「バンブーブレード(9〜10巻)」

BAMBOO BLADE 10 (ヤングガンガンコミックス)
BAMBOO BLADE 9 (ヤングガンガンコミックス)

男女混合・7人制という妙なカタチで始まる練習試合。先鋒の東から始まり、室江高が意外にも連勝を重ねてゆく。鎌崎高メンバーのイライラが募る中、一人平静を決め込んでいた岩堀が、タマキと対峙する…。


室江剣道部の元に突如舞い込むテレビ出演の依頼! 一方、九州の地で天才剣士・榊(さかき)ウラの復活を目論む桃竜(とうりゅう)学院剣道部顧問・寺本(てらもと)は、訪問したウラの自宅で息を飲む。彼女の部屋は “パンドラの箱”だった…!


最新刊が出たのでまとめて感想。この作品の最大の美徳は、シリアスなシーンがあっても、全体として「剣道部コメディー」という雰囲気をしっかりと保っているところだと思います。


例として9巻の鎌崎高校での練習試合について少し。このシーンでは、本気で剣道に取り組まなくなってしまった鎌崎高校の岩堀が、珠姫と試合をすることで変化が起こります。かなりストレートに岩堀の成長が描かれていて、作中でも珍しいくらいにシリアスな展開なんです。が、その後にくる「コジローVS石橋先輩」が一気にコメディーに。 しかも、これがとてもよく出来ているんですよw シリアスなシーンとして、物事に本気になれないことの「格好悪さ」を岩堀を通して描いた後に、まったく同じ「格好悪さ」を、石橋先輩を通したコメディーとして描いてしまうんです。しかも、このシーンのためだけに着々と伏線まで張られているというw こういうコメディーシーンを混ぜ方が絶妙で、だからこそシリアスなシーンがあっても「バンブーブレード」としての雰囲気を保てるのでしょう。


そしてもちろん、雰囲気が崩れない要因はほかにもあります。漫画的な派手さではなく、あくまで「地味」に人々の成長を描き続けている点も、作品全体で共通しています。また、室江高校剣道部の日常を賑やかに、楽しそうに描いている点も一貫していますね。あくまで奇をてらわずに、作り上げた作品の雰囲気をしっかりと保った上でストーリーを進めていく、この丁寧さが「バンブーブレード」の安定した面白さを生んでいるのだと思います。


それはそれとして、最新刊の10巻です。10巻は次の展開へのつなぎといった意味合いが強く、8〜9巻のように強く印象に残るシーンはありませんでした。話のメインは、散々引っ張ってきた「榊ウラが剣道をやめた理由」が明らかになること。これがまた、読者の想像の斜め上を行く土塚先生らしい外し方で、笑わせてもらいましたw が、「ブラックデュラン」の話がちと長すぎたわなw
しかし、一番の見所はなんといってもキリノの「そんなことはないよ。コジロー先生は前からああだよ」の一言でしょう。ここ、ほとんどの読者がニヤニヤしながら読んだシーンではないでしょうかw


そんなわけで、次の巻も楽しみです。最近はタマちゃんの出番もすっかり少なくなっている感じがありますが、次はもうちょい出番はあるのだろうか?あと、最近は絵のタッチが変わってきていて、私としてはちょっと苦手な感じになっているのが残念。1〜2巻くらいのシンプルな絵柄のほうが個人的には読みやすかったなぁ