古川日出男「アラビアの夜の種族」を読了しました。
私は長い小説が得意ではないのですが,古川氏の著作の中でも特に評判の良い作品なので,
いつかは読んでみようと考えていました。
今回,夏季休暇の期間を利用して,何とか読み終えることができました。


剣や魔法で化物を退治するって,こんなファンタジーな小説は初めてでしたw
ロールプレイングゲームウィザードリィ外伝2)のノベライズが元ネタであることは事前に知っていたのですが,
ここまでファンタジーに寄った作品だったとは…。
この種の冒険ファンタジーみたいな話はあまり得意ではないですが,
それでも相変わらずの古川節(句点,ルビだらけ…)のおかげで,それなりに楽しく読めました。
特に物語の後半,地下の阿房宮(あぼうきゅう)が再び登場したあたりからは,
徐々に古川氏の悪乗り(?)がひどくなっているせいか,文章に勢いが出ている気がします。


奇人達が建築物を作るときの擬音が「頓珍漢(トンチンカン)」だったり,
奇人の書いた本のタイトルが「安本丹(アンポンタン)伝」だったり,もう,悪乗りとしか言いようがない…。
狂牛病」を差別語として問題にするような言葉狩り好きの方々は,
この作品を即刻問題にするべきだと思いますw


冒険ファンタジーが得意でない私にとっては,やはり「ベルカ,吠えないのか」のほうが面白かったです。
ただ,迫力のある文体,やけに荒い話の展開,まじめなのか不真面目なのかわからないストーリーなど,
古川氏らしさが十分に発揮された作品であることは間違いないと思います。
まずは有名な「ベルカ…」を読んでみて,気に入った方はこの作品も読んでみるとよいのではないでしょうか。
古川氏は,その文体やストーリーも含めて,かなり好みの分かれる作家さんだと思うので。