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ネットなどの情報を見ていると,やけに評価の良い「時をかける少女」の映画版。
私はあまり映画を見る人ではないのですが,ちょっとした機会があり見に行ってきました。
この映画の原作となっている筒井康隆の小説「時をかける少女」は,
以前に読んだことがありますが,昔のジュブナイル作品ということもあり,
設定や文体がどうしても古臭く感じられてしまいました。
また,時間SFとしてのトリックも,どうもイマイチという感じ…。
もちろん,今の基準で昔の作品を判断するのは間違っていますし,
私くらいの年齢(20代前半)を対象に書かれているわけでもないわけで,
私がこの作品の価値を正しく判断できる立場にはないと思います。
でもまあ,個人的な感想としては,それほど面白いとは思いませんでした。
で,今回見に行った映画版の「ときかけ」。
前評判の良さから楽しみな気持ちもありましたが,
原作どおりの内容だと期待できないかも,という不安もちょっとありました。
しかし,映画が始まってしまえば,きっちりと楽しむことができました。
真琴を「時をかける少女」の「2代目」というポジションにして,
話の枠組みは小説版をそのまま引き継いでいるという,絶妙のリメイクだと思います。
原作を読んでいるとより楽しめますし,原作を読んでいなくてもまったく問題はありません。
原作のファンの方も,別の作品でありながら同じ世界観を楽しめるので,
かなり楽しめるのではないでしょうか。
ちなみに,原作がダメだった私のような方でも十分に楽しめると思います。
比較的単純な話ではありますが,笑いどころはきっちりと笑わせ,
ラストでは喪失感,将来への期待感をきっちりと描くなど,
安心して楽しめるお話になっています。
真琴がタイムリープ(時間跳躍)の能力を使っていろいろと都合の良いことをしたり,
他人のために頑張ってみたりするシーンには,思わず声を上げて笑ってしまいました。
ほんと,しっかりとツボを抑えていると言う感じの演出ですね。
ただ,ネットの評判から過度な期待を抱いて見に行くと,ちょっと肩透かしを食らうかもしれません。
この作品は,とてつもなく面白いというよりは,安心して楽しめる,というイメージなので,
意外性や感動などを求めている人には,もしかしたら退屈なのかなぁと思います。
この「安心して楽しめる」という感覚,おそらく「よつばと!」と同じ部類の楽しさなんでしょうね。
あずまきよひこ先生が,ブログで「ときかけ」を勧めているのも,ちょっとわかる気がします。
ちなみに,「ときかけ」は原作も映画も,時間SFとしてはとても単純な内容ですが,
時間SFの仕掛けを楽しみたいという場合は,高畑京一郎氏の「タイムリープ」をお勧めします。
この作品は「ときかけ」のオマージュとして書かれていますが,
仕掛けは断然原作よりも凝っていて,パズルを組み合わせるような楽しみが味わえます。
それでいて,時間SFなどほとんど読んだことのない私でも理解できるように書かれており,
とても良質な作品です。
小説版,映画版の「ときかけ」を見た方には,ぜひ読んでもらいたい作品です。
ただし,すでに絶版になっているので,古本屋でしか手に入らないでしょうが…。