聖マルグリット学園の図書館塔の上の上、緑に覆われたその部屋で、
妖精のような少女―ヴィクトリカは待っている。
自らの退屈を満たしてくれるような、世界の混沌を―。
その少女は語るのだ。パイプをくゆらせながら。
「混沌の欠片を再構成しよう」
そして、たちどころにそのどんな謎をも暴く…いや、〈言語化〉してしまうのだ…という。
西欧の小国・ソヴュールに留学した少年・久城一弥。
彼はふとしたことから知り合った少女・ヴィクトリカとともに、郊外に住む占い師殺人の謎に挑む。
しかし、それはある大きな謎の欠片でしかなかった。
囚われの姫と、彼女を護る死に神が、幽霊の現われる呪われた船の謎に挑む。
白と黒の物語の幕が今、開きます。

桜庭氏の代表作の一つである「GOSICK」シリーズですが,
実は私は読んだことがありませんでした。
少年少女向けの内容ということで,私は対象年齢に入っていない気はしましたが,
やはりファンとしては代表作を読んでおかないといかんと思い,今回読んでみました。


感想としては,とても優等生な作品だなぁと思いました。
名探偵役のヴィクトリカが,天才的な頭脳で事件を解決していくという探偵ものの基本,
また,ヴィクトリカに思いっきりキャラクター(ツンデレ?)をつけて
楽しませるライトベルの基本,この二つを忠実に守っていて,それがよくまとまっています。
読んでいて安心感もありますし,私が読んでいても普通に楽しめる内容でした。
まあ,ヴィクトリカと一弥のやり取りはなんかは,読んでいて気恥ずかしいものがありますが…。


ただ,「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」などの「少女もの」で桜庭作品を知った身としては,
いかんせん物足りない感じがします。
なんというか,桜庭さんにしてはうまくまとまりすぎている感じが…(失礼ですねw)。
いや,どうも「ブルースカイ」で伏線を回収しないとか,「推定少女」でいきなり超展開とか,
少女には向かない職業」で唐突な終わり方をするとか,そんなイメージが強すぎて,
桜庭さんはラストをうまく折りたたむことをあえてしない人なのかなぁ,と思っていたので。
(いや,「砂糖菓子…」はきれいに折りたたんでいるのですが,あれは偶然だったのかなぁ,
などと,とても失礼なことを思っていましたw)
で,物語がきっちりと折りたたまれないことで読者として不満は残るのですが,
でも,それがなぜか桜庭さんの魅力にもなっています。
つまり,桜庭さんって変な作家で,その変なところが持ち味なんですよね,やっぱり。
「GOSICK」には,そういう変なところがないんですよねぇ。


とはいえ,こういう優等生な作品もしっかりと書ける,というのは大事なことなのでしょう。
実際,「GOSICK」を読んで,12月に発売予定の「赤朽葉家の伝説」が
さらに楽しみになってきました。
たぶん,新刊はまた変な作品になるのでしょうが,ミステリ部分は
「GOSICK」のような安定したものになるかもしれません。


…なんか不満だったー,という感じの感想になってしまいましたが,
普通に面白いことは面白い作品です。
とりあえず,「GOSICKⅡ」くらいまでは読んでみよう…。