「赤×ピンク」

新シリーズ「赤×ピンク」の第1巻。
躁鬱の激しいブルマ少女、まゆ14歳(実は21歳)。
魅せることに喜びを感じる女王様、ミーコ(実はSMの女王様)。
女性にモテる女性恐怖症の空手家、皐月(実は…)。
彼女たちが毎夜働くのは、廃校の校舎を改良したファイトクラブ
それぞれが秘めた思いを胸に、たたかい続ける…。

「赤×ピンク」は,桜庭氏にとって「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」に代表される
「少女もの」を書くきっかけとなった作品だそうで,ずっと気になっていました。
ただ,なかなか買いにくい感じの作品ではあるわなぁ,と思って敬遠していましたが,
今回思い切って買ってみました。


桜庭氏は変な作家だ,という話を以前に書きましたが,
これは今まで読んだ中でも一番へんな作品かも知れません…。
舞台は女性同士が戦うファイトクラブと無茶苦茶ですし,
また登場人物も無茶苦茶。
SMの女王様やらロリアイドルやらM男やら…。
もう何がなんだかわかりませんw


物語は3つの章に分かれていて,それぞれ別の女性の視点から書かれます。
それぞれの登場人物は性格が異なりますし,ファイトクラブで戦う理由も
異なっています。
そしてまた,それぞれに異なった悩みを抱えており,
話はその悩みに焦点を当てて展開されていきます。


心理描写がふらふらと要領を得ない感じや,悩んでいるのに文体がやけに明るい点などは,
とても桜庭氏らしい感じがします。
しかし,なんというかいつもみたいに面白いとは思えなかったなぁ。
なんとなく,作品で書きたいテーマはあったのだけれど,
それがうまく形になっていないような印象を持ちました。


桜庭氏の心理描写は,女性ならではの部分が多いせいか共感はできないんですが,
なぜか妙に迫力とか,説得力とかがあるんですよね。
それが,今回はあまり感じられませんでした。
1章の「まゆ」については比較的入りやすかったのですが,ラストがどうしても解せないしなぁ。


また,物語の設定もちょっととっぴ過ぎる気がします。
悩む少女達を描くのであれば,別にファイトクラブである必然性ってない気がする…。
もっと普通の状況であったほうが,むしろ悩みがリアルになったのではないでしょうか。
まあ実際,その後の作品では舞台を現実の田舎町にしているわけですが。


ただ,この作品が桜庭氏にとってターニングポイントになったという
話については納得です。
まだまだうまく言ってはないけれど,このテーマが後に
「砂糖菓子…」や「七竃…」につながっているんだなぁ,というのはわかります。
人にお薦めできる作品ではありませんが,桜庭ファンであれば
読んでおく価値はあるかもしれません。