「夜市」 恒川光太郎

大学生のいずみは、高校時代の同級生・裕司から「夜市にいかないか」と誘われた。
裕司に連れられて出かけた岬の森では、妖怪たちがさまざまな品物を売る、
この世ならぬ不思議な市場が開かれていた。
夜市では望むものが何でも手に入る。
小学生のころに夜市に迷い込んだ裕司は、自分の幼い弟と引き換えに「野球の才能」を買ったのだという。
野球部のヒーローとして成長し、甲子園にも出場した裕司だが、
弟を売ったことにずっと罪悪感を抱いていた。
そして今夜、弟を買い戻すために夜市を訪れたというのだが―。第12回日本ホラー小説大賞受賞作。

日本ホラー小説大賞受賞作のこの作品は,
なんとなく評判になっているようなので読んでみました。
ホラーと言うよりはファンタジーなイメージで,
特に怖くはないですが,面白かったです。


「夜市」と「風の古道」の二つの作品が収録されていて,
どちらの作品も張った伏線はしっかり回収していますし,
読んでいてサプライズもあります。
とても安定した作品という印象です。
「風の古道」のラスト5行は蛇足だったかなぁ,とも思いましたが,
でも最後まで楽しんで読めました。


また,学校蝙蝠やら人攫いやら,わけのわからない化け物が普通に出てきて,
こういった作品に慣れていない私はちょっと驚いてしまいましたが,
読み進めると全然違和感がなくなってきて,
むしろ作品の世界観に化け物がよくなじんでいたと思います。


…ただ,日本ホラー小説大賞の選評を見ていると,
評価高すぎない?とか思ってしまったり。
いや,世間の評判もずいぶんと良いみたいですが。
私の感想は,とても安定した面白さ,という感じだったので,
そこまで激賞されるのは,ちょっと以外でした。
ただ,確かに新人でここまでしっかり書けるというのはすごいのかもしれませんね。
また機会があったら,恒川氏の作品を読んでみたいと思います。