「涼宮ハルヒの陰謀」

年末から気にしていた懸案イベントも無事こなし、残りわずかな高一生活をのんびりと楽しめるかと思いきや、ハルヒがやけにおとなしいのが気に入らない。こんなときには必ず何かが起こる予感のそのままに、俺の前に現れたのは8日後の未来から来たという朝比奈さんだった。しかも、事情を全く知らない彼女をこの時間に送り出したのは、なんと俺だというのだ。未来の俺よ、いったい何を企んでいるんだ!?大人気シリーズ怒涛の第7弾。


「消失」以来の長編で,ストーリーもやっと動いてきた感じの「陰謀」。時間遡行ネタで,私としては好みの感じではあるのですが,もう少し頑張って欲しかったという印象でした。頑張って欲しかったというのは,朝比奈みくる(大人版)がキョンとみくる(8日後の未来から来たみくる)に対して出した指示を,もう少しうまく使って欲しかったということです。


みくる(大人版)からの意味不明な指示(山にある石を縦にする,亀を川に放流する…)に従ってキョンとみくる(8日後)が動くことで,未来が改変されるのを防ぐ,というのが大まかなあらすじです。そのため私は,みくる(大人版)からの意味不明な指示に従って行動することで,未来にどういう影響があるのか,という部分に期待して読み進めました。一見ばらばらで,意味不明に見える行為(亀を放流したり,石を縦にする)が引き金になって,とんでもないことが起きるという感じですね。伊坂幸太郎の「ラッシュライフ」や,恩田陸の「ドミノ」のみたいな,パズル的な展開といいますか…。
しかし,その部分についてはあっさりした解答しかなく,結局はキョンとみくる(8日後)が,みくる(大人版)の指示を守るために悪戦苦闘する,というのが話の中心でした。…それはそれでよいのかもしれませんが,それくらいのネタだったら400ページも掛けることはなかったかなぁと思います。みくる(大人版)からの指示が大きな伏線になっているなら,いくら長くなってもOKですが。。。


また,未来人(みくる),宇宙人(長門),超能力者(古泉)に敵対する勢力の登場など,シリーズとしては徐々に動きが見えているのですが,敵対勢力については「雪山症候群」(涼宮ハルヒの暴走より)でも匂わせていることを考えると,ちょっと引っぱりすぎという気も。まぁ,シリーズ物のライトノベルではこれくらい当たり前なのかもしれませんが,でももうちょっとテンポ良く進めて欲しいかな。


…まあ,何だかんだでつまらないわけではなく,リーダビリティーの高さは相変わらずです。また,「朝比奈みくるの憂鬱」(涼宮ハルヒの動揺より)でみくるが味わっている憂鬱(何も知らされないまま,行動を強いられる)をキョンに体験させる,という展開はありだったかなと思います。ただ,谷川氏は「消失」を書けるだけの力があることを考えると,もっと複雑で,レベルの高い作品を期待しても良いはず。とりあえず既刊は読んでみよう。


ちなみに,6巻目の「涼宮ハルヒの動揺」の感想としては,「もっとSFやってくれー」ということだけです。