「13」

一九六八年、橋本響一は左目だけが色弱という特異な障害をもって生まれた。高い知能指数と驚異的な色彩能力に恵まれた少年響一は、従兄の関口と共にザイールに渡る。そこで彼が出逢ったのは、片足の傭兵「13」を通じ、別人格を育んだ少女ローミだった。驚異の体験を経て渡米した響一は、二十六歳の時にハリウッドの映画製作現場で神を映像に収めることに成功する―。溢れ出さんばかりの色彩と言葉、圧倒的なディテールが構成する、空前絶後のマジカル・フィクション。


誰か私にこの作品の意味を教えてくださーい!


…というわけで,古川日出男の(実質的な)デビュー作である「13」を読んでみましたが,相変わらず意味が解らない…w 物語は大きく二つに分かれていて,第一部の「13」は少年時代の響一のアフリカ(コンゴ)での体験を,そして第二部「すべての網膜の終わり」では26歳になった響一のハリウッドでの体験を描いています。


が,メインの話以外にも,ザイールの狩猟民族「ジョ族」に伝わる神話,コンゴで命を落とした白人の話,映画「すべての網膜の終わり」のあらすじ,響一がジャングルの村で聞いたという「犬の少年」の話などなど,いくつもの物語のアイデアがこの作品にぶち込まれていています。デビュー当時からいろんなアイデアが頭にあったんだなぁと,とびっくりします(特に「犬の少年」の話はベルカの下敷きになっている話だし)。それぞれ単独の話としても十分面白く,特にジョ族の神話(ボロンボロンとエパニョニョコ)はとても印象に残りました。狩猟民族たるジョ族が,「食うために動物を殺すことは絶対に悪いこッた」と言って語り始めた神話は,要約すると「人が死ぬようになったのは動物の肉を食うようになったから」という物語で,この狩猟民族たちの価値観には納得させられました。


ただ,「13」という一つの作品としてバランスがとれているかというと,正直疑問です。特にローミのパートについては後半があまりにもあっさりと描かれちゃっているからなぁ。第一部では濃厚に描いているだけに,その最後についても丁寧に描いて欲しかったと言う思いが。第二部でのシーフード食らう描写なんていらねぇから,ローミのパートをもっと書いてよw また,後半のハリウッドの話と,前半のアフリカの話がもっと絡み合ってくるのかと思っていたのですが,それほどには関連してこなくてちょっとがっかり。そのせいか,どうにも全体的にはまとまりのない印象になってしまいました。… まぁ,物語の構成の大胆さもこの作品の魅力だと言われればそうかもしれないんですがけどね。ただ,私にはちょっと大胆すぎな感じが。


まぁ,とりあえず第一部のアフリカの描写は相変わらず圧倒的で,それだけでも読む価値あるかも。…というか,これでデビュー作ってのはいろんな意味で無茶苦茶だ…。ちなみに,本当はこの作品の前に「ウィザードリィ外伝II 砂の王(1)」という,ゲームのノベライズ(未完)でデビューしているそうです。実はこれが「アラビアの夜の種族」の元ネタになっているそうですで,どんなものだったのかちょっと読んでみたい気もします。