「荒野」

あらすじは公式サイトにて…
http://www.bunshun.co.jp/kouya/story/index.html


ファミ通文庫で出版されていた「荒野の恋」の2作分+書き下ろし1作で、一つの完結した作品という体裁です。ので、文庫から読んでいた人はちょっと納得いかないかも。ちなみに私は、桜庭一樹のファンを公言しておきながらこの作品は読んでいませんでした。なにせ、恋愛ものの作品ってあまり読まないので。。。そんなわけで、完結編として出版されたこの作品もかなり遅れての読了となりました。


結論から言いますと、面白かったです。いや、中学生の女の子の恋の話を、どきどきしながら読んでいる自分はちょっとどうなんだ、というのもありますがw 前にも書きましたが、自分がまったく「実感」できない女性の感情を、独特のユーモアセンスと妙な迫力でもって読ませてしまうというのは桜庭氏ならではだと思います。この作品でも、ところどころでクスリと笑ってしまうようなシーンもありますし、一方でヒロイン・荒野の父親で、恋愛小説家である山野内正慶の周辺にいる「大人の女性」たちはやたらと毒々しい。周りにいる大人の女性たちが、正慶をめぐって修羅場になっているような状況がしばしばあるのですが、そりゃ荒野じゃなくても自分が大人になっていくことにためらいを感じますってw そんな場面ばっかり見せられてりゃなぁw


ただ、周りの大人達の激しい愛憎とは対照的に、荒野の「恋」はおだやかでゆったりとしています(桜庭氏の作品としてはかなり珍しい気が…)。全体的にそれほど大きな山場もなく、終わり方もフッと終わってしまうので、ダラダラと読むのにいい作品だなぁと思いました。…いや、感想書いてて本当に困るのが、ここが面白いっ!て部分がそれほどあるわけじゃないんですよ。でもなんか面白いんですよ。一人の少女が徐々に大人になっていく過程がゆったりと書かれていて、それを覗き見ているような感覚が面白いのかなぁ。でも、そうやって書いちゃうと自分がひどく気持ち悪い人みたいだなぁw


さて、この作品のテーマは確かに「恋」なのでしょうが、主題としては「砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない」、「推定少女」、「少女七竃と7人の可愛そうな大人」などと同様に、少女の成長を描いた作品なのでしょうね。同じ少女の成長を描いた作品でも、これだけさまざまな手法(SF、ミステリ、恋愛…)で書いて、それがしっかりと面白いというのは素晴らしいです。ライトノベルから一般小説に舞台を移し、読者層の年齢も高くなってきている状況からしても、桜庭氏は今後、こういった少女の成長を描く作品は減るだろうとは思います。が、いつか忘れた頃に、また別の手法で「成長小説」を書いてくれたらな、と期待しています。


予断ですが、エピソードとして印象に残っているのが、荒野が初めて「えっちなDVD」を見て、「リバース」してしまうところなんですよねw 私も初めてエロビデオを見たとき、吐きはしませんでしたがなんか気持ち悪くなったのをすごい思い出してしまいました。こういう体験は、男女問わず結構あるものなのかもしれませんw