年間日本SF傑作選「虚構機関」

虚構機関―年刊日本SF傑作選 (創元SF文庫)

「2007年は、日本SFのゆりかご〈宇宙塵〉の創刊からちょうど50年。日本で初めて世界SF大会が開かれた記念すべき年でもあり、新たな出発点にふさわしい。ちなみに日本SFの総合的な年次傑作選は、筒井康隆編『日本SFベスト集成』以来33年ぶり。編者の手前ミソながら、SFファンのひとりとして、この企画が実現したことを心から喜びたい。SFは元気です」――大森望(序文より)

「国産SFはアンソロジー自体の数が少ないが、筒井康隆が編んだ『日本SFベスト集成』シリーズを除いて、年間ベストアンソロジーが見当たらないのは不思議であった。SFは新しいアイデア、自由な発想を求めて未来に目を向けているジャンルだから、後ろを振り返る風習が、そもそもないのかも知れない。しかし星新一がデビューしてから50年が過ぎ、日本SFは充分にジャンルとしての財産を積み重ねてきた。そろそろ毎年の秀作をまとめて、「歴史」を残していく時期に来たのではないか」――日下三蔵(解説より)


2007年版SF傑作選。読んだことのある作家さんは小川一水氏、山本弘氏、恩田陸氏くらいのもので、他の方の作品は未読。読書の幅を広げるのによいかも、ということで読んでみました。以下、それぞれの作品について簡単に…。


グラスハートが割れないように(小川一水

結構読む作家さんの作品ですが、正直これは微妙。「グラスハート」に依存しちゃう小枝にも、それを止められない康介の気持ちも正直よくわからん。ただ、グラスハートをめぐる議論(科学的な議論における説明責任云々の話)は、文系人間としてはちょっと新鮮で面白かったかな。


七パーセントのテンムー(山本弘

一つのSFネタを料理してきっちり落ちをつけるという、山本弘らしい短編作品。これは面白かった!「意識とは何か」の答えが明かされるラストがいいですねぇ。もちろんホラ話なんだけれど、もしかしたら本当かも、と思えてしまうんですよ。


羊山羊(田中哲弥

なんだこれw 田中氏は馬鹿な話を書く方であるという噂は聞いていましたが、本当に馬鹿な話でしたwとりあえず、エロいですよということでw


靄の中(北國浩二

しっかりと短編らしい短編。オチはそれなりに読めるけれども、表現の仕方がいいですね。リーが赤ん坊に話しかけるシーンにゾッとしました。。。


パリンプセストあるいは重ね書きされた八つの物語円城塔

??? 全部読みましたが、まったく意味分かりませんでしたw 8つの物語を含んだ短編。円城塔氏は難解な話を書く方だと聞いてはいたんで、読めないだろうなぁとは思っていましたが…。少なくとも、電車での読書には向かないなぁw じっくりと腰をすえて読むことをお薦めします。ただ、砂鯨とか、紐虫とか、意味が分からないなりに面白いと思えるエピソードもちらほらありました。


声に出して読みたい名前(中原昌也)、ダース考、着ぐるみフォビア(岸本佐和子)、忠告(恩田陸)、開封(堀晃)、それは確かです(かんべむさし

ショートショートとかエッセイとか。つまらなくはないけれども、短すぎてなんとも言えないです。岸本氏のエッセイはもうちょっとまとめて読んでみたいかも。


バースデイ・ケーキ(萩尾望都

この作品が唯一の漫画。なんとなく、藤子・F・不二雄氏の短編SF集「ミノタウロスの皿」を思い出しました。奇想天外な短編漫画って面白いですね。


いくさ 公転 星座から見た地球(福永信

繋がっている(?)三つのお話。正直、何を楽しめばよいのかあまりわからなかった…。詩的なものとして捉えればよいのかしら?


うつろなテレポーター (八杉将司)

面白い。山本弘「アイの物語」の一作「ときめきの仮想空間」と同じような、量子コンピュータの社会シミュレータ内の人々のお話。シミュレータ内の人々の自我に対する考え方が微妙に違う、ってところに惹かれますね。物語としてもきっちりまとまっているし、難しい話を平易にしてくれるのとで、とても楽しく読めました。これは是非、八杉氏の他の作品も…って、出版されているのは一作品だけなのかw

http://www.amazon.co.jp/%E5%A4%A2%E8%A6%8B%E3%82%8B%E7%8C%AB%E3%81%AF%E3%80%81%E5%AE%87%E5%AE%99%E3%81%AB%E7%9C%A0%E3%82%8B-%E5%85%AB%E6%9D%89-%E5%B0%86%E5%8F%B8/dp/4198618801


自己相似荘 (平谷美樹

途中で面倒くさくなって投げましたw 頭悪くてすいませんw 説明が長くてなぁ。。。


大使の孤独 (林譲治

地球外生命体「ストリンガー」とのやりとりを、ミステリでお決まりの殺人事件のプロットの中で描いた作品。「空の中」での白鯨とのやりとりとが好きだったんで、これはなかなか面白かった。しかもそれをミステリにぶち込むのがすごい。
地球外生命体「ストリンガー」との接触を描いた作品がほかにもあるようなので、これは是非読んでみたい。


The Indifference Engine伊藤計劃

評判の作家さんで、読んでみると確かに面白い。なんというか、すげぇ〜〜皮肉な話。オープニングとエンディングの文章が同じだけれども、その見え方がまったく異なっております。


全体としては、なかなか楽しめました。もちろん合わなかった作品もありますが、同じ著者の別の作品も読んでみたい、と思えるような作品もありました。そういう意味で、私にとってはありがたい企画本でした。2008年版も出版されると言うことなので、ぜひ読んでみたいと思います。私のようなド文系人間でも楽しめるSF作品もありますので、SFに少し興味のある方は是非。