「ばいばい,アース」

ばいばい、アースIII  爪先立ちて望みしは (角川文庫)ばいばい、アース 2 懐疑者と鍵 (角川文庫 (う20-2))ばいばい、アース 1 理由の少女 (角川文庫 う 20-1)

いかなる種族の特徴も持たない孤独な少女ベル。師シアンのもとを離れ、ただ1つ「唸る剣」だけを手に、今、旅人となるための試練を受ける-。勇気、冒険、幻想の世界。自らのルーツを求める少女の長編ファンタジー小説

都市を支配する神。存在自体が神の法と矛盾するベルを「理由の少女」と呼ぶ者たちが求めるものとは。ベルの戦いはついに王宮を巻き込んで…。生と死、神と都市、そして運命。自らのルーツを求める少女の長編ファンタジー小説


「ばいばい,アース」は,冲方氏の知名度を引き上げた「マルドゥック・スクランブル」の前に書かれた作品で,単行本版はそれほど売れなかったそうで,すぐに絶版になってしまったそうです(上下巻あわせて1000ページを超える厚さということを考えると,仕方ない気もしますが…)。そのため,冲方氏が有名になってからは,なかなか手に入らない稀少本とと言われてそうですが,今回,4巻に分けて文庫化されることになりました。1ヶ月に1巻のペースでの,4ヶ月連続刊行とのこと。で,現在発売されている3巻までを読んだので,今回は3巻までの感想になります。


3巻までの感想を一言で表しますと,「早く4巻読ませろー!」につきますw ファンタジーはちと苦手なんですが,この作品についてはそんなこと言ってられません。いやいや,面白いです。
正直,1巻を読んだときには,作品の世界観にそれほど入り込めなかったんですよね。まだこの段階では,作品の「世界」の設定について,それほど明かされていませんでしたし。カタコームでの戦闘(剣楽)シーンが一つの山場になっていて,ここで楽しめる方は入り込めるのでしょうが,私はどうにも戦闘シーンってイメージが浮かばなくて,あんまり得意じゃないんですよね…(銀英伝は除く)。
しかし,2巻の6章「対峙。爪先立ちて望みしは」で,アドニスの話になったあたりから一気に引き込まれていきました。なんというか,アドニスがあまりにも不憫な境遇が…。どう表現すればよいのかわからないので,あえて「しろはた」の本田透氏の表現を借りるとすれば,アドニスがあまりにも「喪男」で…,という感じでしょうかw もしくは,ガンダムシャア・アズナブル的なダークヒーロー的というか…。とにかく,このアドニスのパートは魅力的でしたねぇ。この辺で,徐々に世界観も明かされてきて,それも興味深いです。
そして3巻では,主人公であるベルの戦闘シーンで,この作品での「世界」に関わる重要なヒント(この「世界」はもしや…)が見えてきました。徐々にクライマックスに向けて話が動き始めているぞ,という感じで,4巻にもますます目が離せません!ああ,早く続きを読ませてくれぇ…。


あえて不満点を挙げるとすれば,本の装丁は単行本のままのほうが絶対にいいだろう。。。ということでしょうか(単行本の装丁についてはこちらを参照してください…。)。単行本の装丁はアマゾンでみただけなのですが,断然単行本のほうがよいと思うんですけどねぇ。単行本の幻想的な風景は,奇妙な,それでいて妙に美しいイメージを持った世界感にぴったりだと思いました。逆に,文庫版のキャラの一枚絵だと,なんかちょっと違う気がしてしまいます。…まぁ,どちらのほうが売れそうかといわれれば,文庫版の装丁だろうとは思うんですがw



というわけで,まだ色々と書くことはありますが,それは4巻を読み終わってからにします。